ナノ秒時間分解赤外分光装置 (中赤外領域) (4000-800cm-1)
ナノ秒時間分解赤外分光装置
光励起分子のナノ〜ミリ秒の時間領域のダイナミクスを、赤外線吸収(4000-700cm-1; 2.5-14μm)の強度変化として検出する。当研究室で開発した非常に高感度な分光装置で極微小な吸光度の変化 (ΔA=10-6) を検出することができる。
図1: 装置図
Nd:YAGレーザー励起色素レーザーの第2高調波 (図2奥) を光励起光源とする。
このポンプ光のビームを、液膜ジェット状の試料上で赤外プローブ光と重ね合わせる (図2中央、図3)。
試料を透過した赤外光は分散型分光器によって分光され、HgCdTe赤外検出器 (MCT) で検出される (図2手前)。
図2: [奥] 励起レーザー Nd:YAGレーザー&色素レーザー
[手前] 分光器&赤外検出器(黒ケース内)
図3: 試料部
信号のうち、交流成分(=赤外光の強度変化分)のみがAC結合によって取り出され、オシロスコープで積算後にPCで処理されて、時間分解赤外スペクトルが得られる。
測定例: 2-アミノピリジン-酢酸クラスターの基底状態逆プロトン移動反応
溶液中の2-アミノピリジン-酢酸複合体は光励起後、段階的2重プロトン移動反応を起こすことが知られている (文献[2])。励起状態で生成したImino体が基底状態に戻った後、最安定構造 (Normal form) に緩和する過程を (逆プロトン移動)、NH変角振動の赤外吸収の退色の回復 (図7,8) という形で観測した。
図5: 2-アミノピリジンのプロトン移動反応
図7: 時間分解赤外差スペクトル
図8: 1640cm-1における赤外吸収強度の時間変化。2-アミノピリジン-酢酸 (青線)、2-アミノピリジン単量体 (赤線)
関連文献
- 橋本守 湯沢哲朗 濵口宏夫 Jasco Report, 37, No.3、27 (1995).
- H. Ishikawa, K. Iwata, and H. Hamaguchi, J. Phys. Chem., 106, 2305, (2002).
- K. Kaneda, S. Sato, H. Hamaguchi, and T. Arai, Bulletin of the Chemical Society of Japan, 77,1529, (2004).
- S. Sato, C. Kudo and H. Hamaguchi, proceedings for twelfth Time -Resolved Vibrational Spectroscopy Conference